主要地方道安芸津下三永線線・蚊無峠



 <現在の道>
 蚊無峠は、東広島市西条町と東広島市安芸津町の間にある峠。平成5年に開通した蚊無トンネルは延長875mで、トンネルの開通により、西条と安芸津の間の時間距離は一気に縮まった。しかし、江戸時代に「三津街道」と呼ばれた主要な陸路は、蚊無峠の東にある大峠で、大正時代の県道も大峠経由だったそうである。



 蚊無峠旧道への分岐は、安芸津町蚊無地区の西端にある民家の横。右手へと分かれる旧道の入りがけにある、落石注意・ここから7kmの標識が、旧道の険しさを暗示している。



 旧道はバイパスを左手に見ながら山すそを進んでいき、バイパスが蚊無川を渡る市ノ渡橋の下をくぐる。



 橋をくぐった先、今度はバイパスを右手の斜面の一段高いところに見ながら、蚊無川が作った段々畑の広がる谷を進んでいく。



 緩やかな勾配で川沿いを登っていく旧道に対して、バイパスはどんどん標高を上げていき、右手の山の斜面の影に消えたかと思うと、今度は進行方向前方の擁壁の上を通っている。




 次第に谷が狭くなってきて、前方に石積みの古い砂防堰堤が見えると、道は大きくカーブして進行方向を変え、蚊無川から分かれて、山の斜面を急な坂道で登り始める。途中、カーブのところで旧道はチェーンとコンクリートブロックなどで封鎖されており、バイパスへと取り付く道を登っていく。



 封鎖された先もしばらく旧道が続いているが、カーブの先でバイパスの法面に埋もれてしまい、そこで行き止まりとなっている。



 バイパスを400mばかり進むと、前方の一段高いところに見える新しいブロック積とガードレールのある道が旧道。バイパスから再び右手へと分かれて再び旧道へと入る。



 等高線の凹凸に合わせる形でくねくねと進んで距離を稼ぎながら、緩やかながらも次第に標高をあげていく。




 バイパスよりも一回り大きく弧を描くように、蚊無峠へと続く道を登っていくと、旧道の改良された区間へと出る。路側には、残コンで作られたコンクリートの塊がいくつも置いてあった。しかし、山の斜面を削って拡幅した改良済みの区間は長く続かず、ここを抜けると再びもとの狭い道に戻る。



 未改良の区間へと入った先で、バイパスの蚊無トンネル入口の上方を通ると、蚊無峠の頂上が次第に近づいてくる。


 倒れかけている古びた路線番号標識があり、その先で保安林を整備して作った蚊無奥生活環境保全林へと続く道が右手へと分かれていく。



 その先が蚊無峠の頂上となっており、峠の頂上は西条町と安芸津町の町境となっている。東広島市と書かれた市町境を示す標識が道路左手の法面の上に、道路右側の石積みには、「西条町」とかすかに読み取れる錆付いた町境標識も残されていた。NTTの無線塔へ続く道が分かれているほか、峠の頂上のすぐそばに、中国セルラー電話(現・KDDI)の中継施設も建っており、峠の旧道を走る車も全く無くなったというわけではないようだ。



 東広島市西条町へと入ると、こちらにも路線番号標識が1本残っていた。人の気配が感じられない、寂しい峠道となっている。



 木々の枝が繁茂してうっそうと茂る雑木林、木漏れ日の射す中を1車線幅の道が続いている。



 道路沿いに続く電線とともに峠からの下りを進んで行き、雑木林の中から抜けると、前方に交差する道路が見えてくる。


 蚊無トンネルの坑口のすぐ北側で、トンネルから出てきたバイパスとと合流し、蚊無峠の旧道区間もここで終わり。



 このページの作成にあたり、参考とした文献等
  あきつねっと・あきつ歴史のさんぽみち


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